■(株)イノベーション アソシエイツ代表取締役  井口不二男氏に聞く


興和サインでは、「日本経営品質賞」創設に深く関わってこられた井口不二男先生をファシリテーターにお迎えし、毎月1〜2回、社内勉強会を開催しています。
「お客様目線での価値」を高めるにはなにが必要か、また興和サインの勉強会では、それをどう目指しているのか──。
Chapter 1 では井口先生にくわしくお話を伺い、Chapter 2 では井口先生と高橋代表に熱く語っていただきました。

 も・く・じ
  1. Chapter 1 INTERVIEW
    1.日本経営品質賞との関わり
    2.興和サインの勉強会に関わった経緯
    3.強くなる企業の3つの条件─お客様目線でいること─
    4.─地道であるということ─
    5.─お客様の対象を絞るということ─
    6.─会社に良い風土をつくる
    ◎コラム:わたし達にとっての勉強会
  2. Chapter 2  TALK
      ── Fujio Iguchi × Yoshifumi Takahashi ──
    1.変革の過程で、なにが起きてくるか
    2.学習の場とはなにか
    ◎「興和サイン勉強会リポート」
    3. エンタメ看板は「マッチ売りの少女」
    4. 「1年待っても、興和サインに!」



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 Chapter 1 INTERVIEW ◆◆◆


1.日本経営品質賞との関わり

─「日本経営品質賞」について教えてください。

「日本経営品質賞」*(名誉総裁:寛仁親王殿下)は、(財)日本生産性本部が1995年に創設した表彰制度です。お客様目線に基づいて新たな価値を創造していくことができるよう、企業が経営構造を革新していく──その取り組みを奨励する目的で創設されました。

─井口先生は、日本経営品質賞にどのように関わってこられたのですか?

賞創設当時の時代背景として、日本のバブル経済崩壊があります。
産業界もモノをつくれば売れるというあり方から、経営の革新が求められるようになってきました。
「CS」(顧客満足;カスタマー・サティスファクション)の必要性がさまざまな所で言われるようになり、産学共同での取り組みや、顧客の満足度調査などが始められたのも、このころのことです。

社会経済性本部(現:日本生産性本部)でも有志の大手企業が集まり、CSについての研究会が立ち上げられました。
当時、NEC総研でNEC企画スタッフの支援をしていた私も、これに事務局として参加していました。研究会のテーマであるCSを調査する1年間、私はアメリカに何度も飛びました。

早くから市場が成熟していたアメリカでは、日本に先んじて、モノが売れない経済の低迷期を経験していました。そのため、経営品質を向上させるための取り組みも徹底的になされていたのです。

80年代のアメリカ経済復興に大きく寄与したのが、米国国家品質賞「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)」だと言われています。MB賞は緻密に体系化された審査基準を持っており、私はこれを学んできました。
そして、日本でMB賞の考えを実践するためのプログラム体系構築や、それを範とした経営品質賞の創設・発展に尽力してきました。

●井口不二男氏・プロフィール
1979年、早稲田大学教育学部卒業、NEC入社。1989年、NEC総研へ。1990〜91年、渡米してMB賞について学ぶ。帰国後、日本生産性本部の日本経営品質賞創設・発展に深く関わる。1999年、現職に。

*日本経営品質賞:http://www.jqaward.org/index.html


2.興和サインの勉強会に関わった経緯

─井口先生と高橋さんの出会いについて教えていただけますか。

日本生産性本部で開催している「経営革新の基礎」コースに、高橋さんが受講されたんです。

コースは講義形式ではなく、ケースを取り上げて、1日じゅうワークをみっちり行うものです。私は講師を担当しており、その準備をしていたところに事務局の人がやってきて、
「おもしろい人が来てますよ、東京、中野の看板屋さんです」と言うのです。
私としてはそのことに何の違和感もなかったのですが、受講者には大手の製造業や中堅企業の人が多い中、事務局の人にはもの珍しく映ったのでしょう。

─高橋さんの第一印象はいかがでしたか?

私がしゃべっていると、腕組みをして「何か違うぞ」っていうような顔で聴いているんですよ(笑)。
いや、実際のところ、与えられた物事や状況に対してあまり考えないで受け流してしまう人が多いなか、高橋さんは自ら思考を深めていくことのできる人だと思ったんです。これは、新しい価値を創造してお客様に提供していくためには、たいへん重要な要素なんです。

─後々、その高橋さんに、興和サインの勉強会をみてほしいと頼まれたときは?

地道にやっていくならお引き受けします、と言いました。
もとより高橋さんも、そのつもりだったようです。


3.強くなる企業の3つの条件 
─お客様目線でいること─

─井口先生がコンサルテーションを引き受ける際に、その企業にはどんなことを求められるのでしょうか?

まず、お客様目線で考えてやっている会社かどうかということ。
それから先ほどお話ししたように、地道に取り組みを続けるということ。
そして、お客様の対象をいかに絞るか、ということです。

こうした姿勢があってこそ、強い会社にしていくことができるのです。

─順番にお尋ねします。お客様目線、というのは?

よく、目線が内向きになっている会社があります。
社内のことばかりに目が行って、みんな上司の顔色を窺って仕事をしていたり、自分達の提供する商品やサービスがいいものだと、ひとりよがりになっている。しかし、それに価値があるかどうかは、お客様が決めることなんですよ。

お客様の立場に立ち、何がお客様の価値につながるのか。その目線を失ったら、モノやサービスは市場では受け入れられませんし、事業としては成り立ちません。


4.─地道であるということ─

「組織の変革には、たゆまぬ努力も、
そして時間も必要なんです」
─地道であることとは、具体的には?

一つの会社が自ら変革していく力をつけていくには、その会社の人達の不断の努力が欠かせません。また、それには相応の時間もかかるんですよ。

昨年度、日本経営品質賞を受賞したスーパーホテル*も、私が関わるようになってから5年半を経ての受賞でした。

企業体でまず必要なのは、企業文化、企業風土ともいうべきものをつくる社長の役割です。これがトップマネジメントですね。
その下にくるのが戦略です。その時の社会状況・経済状況を見通して、数年先までの戦略を立てられるかどうか。
そして、それを実行できるための人づくりを行って、結果としていい製品やサービスを生み出されるのです。

これらのことを一つひとつ、しっかり地道に見直していかなくてはなりません。


*スーパーホテル:業界No.1ホテルチェーン。「低価格でぐっすり眠れる」という、ビジネスユースの顧客ニーズに応えるモデルを構築した。
http://www.jqaward.org/superhotel.htm?OpenDocument


5.─お客様の対象を絞るということ─

─対象を絞るとは、どういうことですか?

実は、大企業であっても、そのリソースはけっして大きくありません。
リソースとは、人、モノ、カネ、情報といった、企業活動を行ううえでの資源です。

「買ってくれる人がお客様」だと言って、なんでもかんでも来た注文に応えていたら、どうなるでしょうか。
リソースは分散してますます薄くなり、ノウハウもたまりません。そんな状況で提供する商品やサービスには何ら特別な価値がつくはずもなく、結局は安売りをしていかざるを得なくなります。


スーパーホテルの場合、ビジネスマンが仕事で利用するという一点に的を絞り、そのためにはどんなサービスが必要かをお客様目線で徹底的に追究していきました。興和サインはエンタメ看板にこだわり、ストリートマーケティング研究所なるものまでつくって取り組んでいます。

「僕はこういう人と仕事をしたい」とお客様を選び、その代わり、決めたからには徹底的に約束した価値を創っていく。
そういうスタンスに立つからこそ、他の追随を許さない、輝くような価値を生み出すことができるのです。


6.会社に良い風土をつくる

─実際に興和サインの勉強会に関わるようになり、その印象はいかがでしたか。

大手や中堅企業では、そこそこ仕事が動いていますから、保身から入って、「ちゃんとこれだけ仕事をしています」と取りつくろうところもあるんです。まず、そこを壊すところから始めないと、本当の問題解決までには行き着かないんですよ。

それに対し、興和サインの皆さんは、とても「素」(す)だなあ、と感じましたね。
「素」というのは、何も飾らない、非常に素直なんですね。

と同時に、「こういう仕事をやってきてよかった」という思いが感じられる。高橋さんのやりたいことに共感している人たちが集まっているということでしょう。

ただし、まだ経営品質向上を目指しての組織改革は端緒に着いたばかりで、畑で言えば土壌を耕している段階です。
でも、この土づくりをちゃんとしておくと、人も育っていくし、会社の良い風土も醸成されていきます。そうなれば、皆がそれぞれ「こういうことをしたら、うまくいった」という現場の知恵を出して触発し合い、新たなアイデアもたくさん出てくるようになるでしょう。

会社で大切なのはノウハウです。ノウハウが人を育て、製品を生み、お金を稼いできてくれます。ノウハウは、会社の良い風土の中で蓄積され、また刷新されていくのです。


◆ Column  「私たちにとっての勉強会」
勉強会に参加しての感想を、興和サインの社員のみなさんに伺いました。

 

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