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■お客様に聞く - まぐろ問屋 仁井田商店 ![]()
― 仁井田商店は、どんな問屋なのですか? ― 唐戸市場は、観光市場としても有名だそうですね。 ![]() 2002年に唐戸市場のリニューアルオープン後、市場内で寿司の屋台をはじめた店があり、当店も含め、多くの問屋が、一般の観光客相手に飲食を提供する屋台もはじめるようになりました。珍しさも手伝って人気となり、観光市場として、全国に知られるようになったのです。昨年は、当店でも飲食の売上が、初めて卸の売上を超えました。 ― 卸売市場なのに、飲食・小売することに問題はなかったのですか? もともと、ほとんど規制らしきものはなく、なんでも「ありあり」の自由な雰囲気でした。中央ではなく、地方卸売市場だったからできたということもあるでしょう。高杉晋作を生んだ改革の風土も関係しているかもしれません。幕府禁制のふくを食べてた街ですしね。 ― 市場の2階にもお寿司屋さんがありますが、クレームはなかったのですか? 最初は当然反発もありました。そのため、屋台はあくまでも一時的なイベントあつかいということにしています。それでも、いまでは、日曜・祝日と、金曜・土曜日のセリの終わったあとに、朝10時頃からやっています。しかし、この屋台人気のおかげで、市場への来場者が何倍にも急増し、お寿司屋さんのお客さんもまちがいなく増え、文句は言われないようになりました。
― 以前は、どんな看板でしたか? 20年以上前につくった看板(下記写真)で、看板として二代目のものでした。まぐろを切り、部位の説明を入れ、それなりにこだわってつくったものです。でも、お客さんから部位について聞かれたとき説明に使っていた程度で、それ以上の意味や効果はなかったと思います。 ![]() ― どうして、立体看板をつくろうと思ったのですか? ずっと前から立体看板を作りたいという思いがあったんです。「かに道楽」みたいな目立つのをね(笑)。自分で作るには、どうすればいいか、も考えていました。それに、もともとイベント好きで、毎年ある下関のさかな祭りに出展していたんですが、いつも手作りで看板をつくっていました。他の店は、人から見られているという意識があまりないんです。やっぱり商売は「見られてなんぼ。目立ってなんぼ」ですからね。私はそう思うんです ― 恭勝さんは、どうだったのですか? ― どうして、興和サインに決めたのですか? ホームページも見たんですが、立体看板を数多く手がけていることはもちろん、何よりも看板に対する熱意を感じました。また、色々な業界に対応できるデザイン力もあると思い、ここなら間違いないと直感しました。資料を送ってもらい、読んでからは、ますますその思いを強くして、すぐ父と一緒に東京に飛んで行きました。他社との比較はしてません。
― 打ち合わせでは、どんな話をしましたか? すでにあった看板の写真を持っていって、これを立体看板に変えたいという話をしました。その看板のイメージがあったので、切って部位説明の入った看板の立体化という方向でお願いしました。また、できれば、かわいいまぐろ、というイメージも話しました。あとは、お任せしました。父も、その後の詳細は、私に任せてくれました。 ― どんな案ができましたか? デザイナーの三田さんが説明してくれましたが、やはり「かわいいまぐろ」と「切れてるまぐろ」では、イメージ的に両立しにくい、むずかしいということでした(下記案)。たしかに、体を切ってあって、かわいいというのはリアルで、ちょっと無理がありましたよね。 ![]() それもそうだな、と思い、それでビームスにあった看板のイメージでまぐろの看板をつくったらおもしろいのではないか、とリクエストをしたんです。たまたま私が都心で見かけ、興味を惹き写真に撮っていた看板があったのです(右写真)。ちょっと未来的で、インパクトがあるかな、と思って。― 「ビームス」案はいかがでしたか? 自分でリクエストしておいて何なんですが、市場には馴染まない感じがしました。カラーバリエーションも2案ご提案いただき、これはこれで悪くないのですが、市場の中に置いたら、きっと違和感があるに違いないと。 ![]() ![]() そこで、デザイナーの三田さんと営業の小松さんのアドバイスをいただき、最終的にオーソドックスな、かわいいまぐろでいくことにしました。当初から多少キャラクター的なイメージ案も僕のなかにはあったので、相談の結果「大きくて愛着の湧くまぐろちゃん」というコンセプトに絞り込みました。 ― どんな最終案になりましたか? ![]() とてもかわいいのに、インパクトのある案に仕上がりました。黄色バックも、飲食には目立っていいと気に入りました。そのため、これで決めかけたのですが、実は、最後の最後で、無理を言って、青バックと夕焼けイメージのオレンジバックの案も出していただきました。市場との調和を考えると、本当に黄色でいいのか、ひっかかりが、ぬぐい切れなかったのです。 ![]() ![]() やはり、まぐろ問屋として、信頼を欠くことのないイメージやデザインということで、結局、ある意味では無難な青バックに落ち着いたのですが、これで本当によかったと思います。 ― 制作過程はいかがでしたか? まぐろらしさを出すのに苦労されたようです。最初はもう少しやせていて、「まぐろ」というより「はまち」というイメージでしたが、最終的にはリアルで、それでいてぽっちゃりしたかわいいまぐろに仕上げていただきました。目や口もとてもかわいいです。まるまる太った方がおいしそうですしね。 また、こちらとしては、つける場所で、照明やら事前準備やらで、ちょっと苦労しました。以前は、2階からわかりやすいように高い位置に看板を付けていたのですが、下を歩いているお客さんに気付いてもらえるように、低い位置に変えたんです。ただ、照明や支柱が看板にかぶっていて多少気になりますので、どうするかが今後の課題です。
― 出来ばえについては、どう感じていますか? とても気に入っています。他にはない立体感がありながら、市場の雰囲気に浮かずに調和しています。インパクトがあり、それでいて親しみやすさもあります。 ![]() ― お客様の評判・反応はいかがですか? 大きいので目につきやすいようです。お客さん、とくに若い人から、かわいいと言ってもらえ、写真を撮っていかれる女性も結構います。 買いに来るお店や会社の方もみな気付いて驚かれる。看板があることによって寄ってきてくれる。そう「寄りつき」が違います。遠巻きにしていた人が、どんどん入ってくる、声をかけてくれる。昨日も顔見知りの社長が「どうかね」と声かけてきてくれました。いつもは声なんかかけてくるような人じゃないのに。看板がコミュニケーション・ツールにもなるんですね。 ― 売上に変化はありましたか? まだできてまもなく、年間を通して波もあるし、年による違いもあるから、はっきりしたことは言えません。ただ、手応えは感じています。たぶん、飲食は1割以上増えているんじゃないでしょうか? また、いろんな種類の寿司を置いていますが、まぐろを求めてくるお客さんが明らかに増えましたね。興和サインさんのアドバイスにもありましたが、以前の看板は市場の景色に同化していましたが、「まぐろ」としての存在感をはっきり主張する看板になったと思います。 ― 市場内での反応はいかがでしたか? みんな開口一番「なんぼかかった?」ですよ(笑)。看板だけでなく照明とか支柱とかまで含めると、結構かかってしまいましたが、幸か不幸か、まだマネをする動きはないようです。みんな何でもすぐマネる方なのにね。看板に関しては、東京まで行って頼んだ訳ですから、そう簡単にマネできんぞ、というのはあります。人がやれないことをやりたかったので大正解です。
― 今後の抱負などお聞かせください。 いま店舗はここだけですが、食べ物の商売は考えています。ただ、フランチャイズみたいにすると質が落ちてしまうので、そういう方法は考えていない。ふぐを他の場所で安くたくさんたべてもらいたいと思っています。 この看板については、今後、どういう効果や影響が出てくるのか楽しみです。10年20年と長く続く看板になってほしいと思います。 興和サインさんについては、私どもと立体看板に対する思い入れがマッチし、本当にいい出会いだったと思います。他にはない看板に仕上がり、名刺にも利用するなど、いろいな可能性が広がったことを感じています。 市場の存在意義が問われているいま、この看板は新たな問屋のモデルにもなったのではないでしょうか? 興和サインさんの活躍のフィールドも、今後どんどん広がっていくのではないかと期待しています。
― マグロの立体看板完成までには、さまざまなエピソードがあったと思いますが、担当された小松さんに、2つほどご紹介いただきました。 <情報収集> 仁井田社長と統括リーダーである息子さんの両氏が、看板製作依頼のために、はるばる下関から弊社に来られることになり、打合せのための準備作業として魚、とくにマグロに関する資料収集を行いました。書店で魚図鑑を購入したり、インターネットでマグロの情報、なかでも日本全国のマグロの立体造形の事例を集めました。魚図鑑からマグロの特徴を学び、それらの調査結果を踏まえてデザインされたのが今回のマグロくんです。 マグロの目の大きさ、視線の決定、マグロの動きを表現するための重要な検討項目である頭部と尾びれの壁からの距離の設定など、幾度となく変更が加えられました。愛嬌のある顔(頭部)の表情、今にも壁から飛び出してきそうな動きも加え、元気の良いマグロの造形デザインを目指しました。その結果、みんなから愛されるマグロ、唐戸市場の人気者になれたのではないかと思っています。 <デザイン図案の有効利用> 立体造形完成までに生み出されるさまざまなアイデア、デザイン全てが実際に立体造形の素材として使用されるわけではなく、全体の一部だけが日の目を見ます。デザイン過程で生み出された幾多のアイデアの有効利用も重要な検討項目です。 完成デザインの図面や画像は、造形製作のみに使用するのでなく、市場を訪れるお客様に配るチラシや、名刺の図案にも使用できます。今回、看板デザインを有効利用するために原画をいくらか変形し、仁井田商店様向けに、名刺のオリジナルデザインを作成しました。本稿に仁井田さんが製作した名刺の例が掲載されています。造形デザインの副産物です。 ![]() ![]()
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