■ オリオン食堂 第二部 ― 手づくり店主、相良和彦のひととなり
― 相良さんがオリオン食堂を開店するまでの経緯を、もっとくわしくお聞きしたいと思います。そもそも、なぜ教員をやめてまで、ラーメン店を経営しようと思ったのですか。
その一方で、生徒たちに「やりたい仕事を見つけろ!」と言いつづけるうちに、「自分の仕事は、ちょっと違うなあ…」と考えるようになりました。 そもそも自分は、独創的なパフォーマンスをして目立ったり、人を喜ばせたりしたいと思う、"エンタメ人間"なんです。教員では、そういう本質は生かせない。じゃあ、思い切ってやめて、なにかやってやろうと思ったわけです。 ― 36歳で脱サラしたわけですが、そのきっかけはなんでしたか。 年齢でボーダーラインを引いたんです。アルバイトでも中途採用でも、世間一般の採用の平均ラインは37歳。なにかを起こすなら、36歳が最後のチャンスだと思ったんです。 ― どうしてラーメンを選んだのですか。
― ラーメン店を経営する魅力は、どんなところですか。
それに、お客さんとの対面商売だから、結果がすぐに出る。ラーメンを手渡した瞬間、お客さんの表情にすべての結果が表れるんです。そのあと、「おいしい」と言ってもらえたらうれしいし、味が悪ければすぐになおそうと思える。 自分はもともと、田舎のよろずやの息子なんです。山梨県の山村で、惣菜からプロパンガスまでなんでもそろった雑貨屋。5歳の頃から店を手伝っていました。 お釣りの計算や接客をしながら、「今日は暑いですね」なんて世間話も学びましたね。 みんなにほめられるのが楽しかったし、「ありがとう」と言われるのもうれしかった。もともと接客が向いていたんですね。 ― いまのお仕事は、選ぶべくして選んだ道だったのかもしれませんね。
― 「オリオン食堂」という店名は、ラーメン店としてはめずらしいですね。店名の由来はなんですか。
ラーメンだけにこだわらず、オムレツもカレーも出せる店にしたかった。それで最初は、地名を組み合わせて「東長崎食堂」という名前に決めたんです。 ところが、開店一ヶ月前、うちの飼い猫の血統書を見ることがあり…そこに「orion」という出生名が記されていたんです。 「『オリオン食堂』…ああ、これだ!」と。 すぐに「猫まねき」「オリオン座の三ツ星」=「三ツ星レストラン」「夜空に永遠に輝く星」、この3つが頭に浮かびました。現在の看板にも、このときのひらめきは、三ツ星の形で反映しています。 ― 猫のキャラクターもその場で思い浮かんだのですか。
――お店の手づくりは順調だったのですか。
手づくりのいいところは、ものの位置やデザインに制限がないところ。客席の配置を考えて、柱を取り去ったり、棚を1センチ単位でずらしたり。本編でも少しお話ししましたが、大きな文化祭のアトラクションを作っているような感覚でした。 近所の人には大工さんだと思われていました(笑)
― 今回の看板のもとにもなった、相良さん手作りのロゴについて解説をお願いします。
「食」は麺がまるまったように、「堂」は人が走っているように見せたくて、何度も描きなおし。 猫の表情や色も、キャラクター商品になったときのことを想像して、いろんな角度から想像し、何度も描きましたよ。 とにかく、魂をこめてつくったロゴだと言いたいですね。
― では、肝心のラーメンについてもお聞かせください。
オープン当初のオリオン食堂は、あっさり系のスープだったんです。でも、時代の流れが濃厚系のスープへと変化して、お客さんも減り、一時は「つぶれてしまうのでは…」というところまで落ち込んで。 そこで、開店4年目の2004年、思い切ってスープを濃厚系へとチェンジすることにしたんです。 そのために、店舗の改装もやりました。 ― スープのチェンジのために改装をしたのですか。 そうです。濃厚系スープの研究を重ねるうちに、それまでの寸胴のサイズやコンロの数では、最高の味が引き出せない、という結論に行き着いたんです。調理場そのもののスペースを広くとる必要がありました。 この改装は、さすがに自分ひとりではできませんでした。 オープン時とはちがって、すでにノウハウもあるし、人も抱えていたし、改装に時間をかけるわけにはいかなかった。 大工さんを1人雇って、一緒に作業しました。一ヶ月ほどで改装は完了。 そのときに、初代の手づくり看板が、危険だという話になって…。屋根からおろしました。 でも、改装したかいがあり、濃厚スープは当たりました。オリオン食堂、第2ステージのはじまりです。 店名も「オリオン食堂」から「オリオン食堂2」にバージョンアップし、現在に至ります。
今後は、ラーメン界を盛り上げるための活動をしていきたいですね。 自分の店の売り上げだけでなく、近隣の店も、ラーメン界全体も、飲食店全体も…みんなが一緒に伸びる方法を考えたいんです。 幸せの器は、大きいほうがいいんですよ。 個人の幸せは周囲のみんなが幸せでないと得られないものです。自分たちができるところから、どんどん幸せを提供していきたいですね。 ※ オリオン食堂のWebサイト ※ 取材日時 2009年8月 ※ 取材制作:カスタマワイズ |